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おどろき、モモの木、健康祈願?!(平成26年3月)

 平安時代の貴族たちは、季節の節目である「節句」がくると、薬草で体のけがれを祓い、厄除けと健康を願いました。これを由来としたのが3月3日の「桃の節句」や、5月5日の「端午の節句」といわれています。「桃の節句」は、ちょうどモモが咲く季節だからということで、そう呼ばれていますが、果たして「モモ」は厄除けと健康に無関係なのでしょうか。
 そもそも「モモ」とは、春に花を咲かせ、夏に実が成る「木」のことですが、皆さんが「モモ」と聞いてまず思い浮かべるのは、おそらく「果実」の方でしょう。甘くてみずみずしいため好物の方も少なくないと思いますが、モモは食物繊維を豊富に含む、ありがたい果物でもあります。花は、主に観賞用として庭木や切り花として親しまれ、近年は香りの成分にも人気が。さて、モモの実や花、葉、種、根、樹皮、樹脂といった1つ1つが、実は余すことなく古来より漢方として活躍していることを、ご存知でしたか?
 たとえば乾燥させた花(白桃花)には、利尿、緩下、血行改善、むくみ、便秘などに有効な成分があります。葉には、あせもや湿疹に効果的な作用があり、江戸時代には夏の土用の日にモモの葉を浸した「桃湯」に入る習慣がありました。ちなみに乾燥していない葉には青酸化合物が含まれるので、もしご家庭で桃湯を楽しむ場合は、必ず「乾燥させた葉」を使うように。その他の部分にも、筋肉痛、嘔吐、腹痛、黄疸、咽喉痛、口内炎、痔などに有効な健康効果が数えきれないほどあります。このことから原産国の中国では、モモには鬼や化け物を体から追い出す力があると考えられ、現代でも魔除けの札にモモの木を使用しているそうです。まさにモモは「厄除けの木」だったのですね。
 ちなみに3月3日の桃の節句(雛祭)に食べる「雛あられ」の色は、白、緑、桃が一般的ですが、これにはそれぞれ意味があります。白は雪、緑は木々の芽吹き、そして桃色は、「生命」を表します。お花見といえばサクラの木ですが、今年は生命の象徴であるモモの木で、一足早くお花見というのも粋かもしれません。