わたしたち日本人には馴染みの深い温泉。その関係は古く、奈良時代に編纂された『古事記』や『日本書紀』にも温泉の記述がみられます。しかし、意外にも「温泉浴」が一般庶民に広まったのは江戸時代以降と新しく、それ以前は、一部の特権階級だけのものであったり、仏教の信仰の対象としてであって、今のように「お湯につかって疲れを癒す」というものではありませんでした。 |
温泉とは、地下から湧き出した温水や鉱水、水蒸気のことをいいます。「泉源温度は25度以上、泉水成分19種のうち、12種以上を規定以上含むこと」と「温泉法」で定められています。 |
古くから、治療の目的で行われてきた温泉浴ですが、その効能はズバリ「温熱」、「浮力」、「静水圧」にあります。まず、温熱は血行や新陳代謝を促し、筋肉・関節の痛みを緩和します。次に、浮力は水中では体重が9分の1程度になりますから、体が動かしやすくなり、リハビリテーションや筋肉増強に適しています。また、静水圧は力の圧迫により血行がよくなり、心臓の動きが活発になりますから、疲労回復、むくみ緩和の効果が期待されます。これらの作用を物理的作用といい、温水や水中でも同様の効果が得られます。 |
よく、「この温泉は○○に効く」などと言ったりしますが、勘違いしてはいけないのは、温泉は人間本来の持つ自然治癒能力を高めるということ。ですから、温泉につかったからといって、けがや病気が治るわけではありません。また、温泉にはさまざまな物質が含まれており、その物質が人体に与える効果があります。これを温泉の化学作用と呼びます。たとえば、暖かさが持続し、自律神経失調症などを改善したりするのもこの作用です。 |